外はすっかり暗くなっていて、いつもならお兄ちゃんに説教されるような時間だ。
まだ補導される時間ではないしウチには門限もない。何も悪いことはしてないはずなのに心臓がバクバクと音を鳴らして落ち着かない。
少し震える手でドアを開け、なるべく音を立てないように家の中へ入る。


「アサ、おかえり。」

「……ただいま。」

「母さんたちは今日帰ってこないって。夕ご飯作っておいたから温め直して食べよう。」


まるで何事も無かったかのような顔をして接してくるお兄ちゃんに拍子抜けした。まだ怒っていると思っていたし、今日はバイトでもないのに何の連絡もなく遅く帰ってきたから、更に機嫌を損ねていると思っていたのだ。
いつもと同じような口調で、優しいお兄ちゃんのはずなのになにか違和感を感じる。