そうして集中していたからだろうか、目の前まで人が来ていることに気づくことが出来なかった。
「…いつまでここにいるんだよ。」
寒そうに鼻の先を赤らめ、こちらを見下ろしたハルマが立っていた。
「なんで…帰ったんじゃないの?」
「別に、忘れ物があっただけだ。」
「あ、忘れ物…」
まだ私と話してくれるのかと勘違いしてしまうところだった。今は私と会うことすら嫌だろう。早く要件を済ませてあげなきゃ。
忘れ物を探すために周りを見渡すが、めぼしい物は特になかった。
「あれ、忘れ物ないかも。どこかに落としたり…」
「ない、忘れ物なんてない。」
「え?」
