忘れかけていた、悩みの種が再び脳裏を過ぎる。せっかくナギくんが明るく話しかけてくれているのに、空気を悪くしたくはない。
「…うーん、やっぱり勉強は大変かな?」
口角を上げて、朗らかに答える。嘘はついていないが、上手く笑えているだろうか。
「そっか…他に、悩みとかないの?」
「え?」
驚いて、思わず足を止めてしまう。ナギくんは真っ直ぐとこちらを見つめていて、私の気持ちを見透かしているようだ。
「ぜ、全然!学校も楽しいし、悩みなんてないよ。」
ナギくんの方を見ることが出来ない。彼の目には私はどう写っているのだろう。私すら分からない私の気持ちを、人に知られるのはなんだか怖かった。
