確かに、日常生活で困ることはあまりないだろう。ただの私の自己満足で、兄に怪我をさせてしまったという罪の意識を少しでも和らげたいだけかもしれない。
それでも、私の事を忘れて欲しくなかった。私はお兄ちゃんのことを忘れたことなんて一度もないのに。


「お兄ちゃんは、記憶喪失になっても私に優しいんだ。まるで他人みたい。」

「じゃあいいだろ。まさか、他人みたいだからって自分の兄に惚れたとか言わねえよな?」


_____息が止まった。


自分の1番見られたくない部分を暴かれたような、最悪な気分だ。
家族同然に育ってきた、誰よりも人として尊敬してきた人への気持ちを、恋愛の一言で片付けられたくはなかった。そんな薄っぺらい気持ちじゃない。もっと大切で、神聖なものだって勝手に思ってた。