「ほんと鈍臭いな。」

「アンタが急に声かけてくるからでしょ!びっくりするからやめてよね。」

「そんなデカい声出してねえよ。お前が勝手に驚いただけだろ。」


しばらく兄のことで気を病んでいたからだろうか。腹が立つやりとりのはずなのに、少し気が抜ける。


「…なんだよ。今日静かだな。変なもんでも食ったか?」


私が反論しないのを不思議に思ったようで、立ち止まってこちらを振り返る。


「そんなわけないでしょ!朝だから眠いだけだよ。」

「…ふーん。」


不満気な様子でドカドカと前を歩いていく。それ以上詮索されることはなかったが、横から不機嫌なオーラをヒシヒシと感じる。


休み明け早々にトラブルの予感がするなぁ…





「はぁ……」


もちろん授業なんて頭に入るわけがなくて、ついため息が出てしまう。休みの間ずっとその事について考えていたからだろうか。学校にいる間もお兄ちゃんのことが頭から離れなかった。
受験ももうすぐだしこのままじゃダメだ。志望校の判定の結果は悪くはないけど、油断してはいけない。