「ほんと鈍臭いな。」
「アンタが急に声かけてくるからでしょ!びっくりするからやめてよね。」
「そんなデカい声出してねえよ。お前が勝手に驚いただけだろ。」
しばらく兄のことで気を病んでいたからだろうか。腹が立つやりとりのはずなのに、少し気が抜ける。
「…なんだよ。今日静かだな。変なもんでも食ったか?」
私が反論しないのを不思議に思ったようで、立ち止まってこちらを振り返る。
「そんなわけないでしょ!朝だから眠いだけだよ。」
「…ふーん。」
不満気な様子でドカドカと前を歩いていく。それ以上詮索されることはなかったが、横から不機嫌なオーラをヒシヒシと感じる。
休み明け早々にトラブルの予感がするなぁ…
◆
「はぁ……」
もちろん授業なんて頭に入るわけがなくて、ついため息が出てしまう。休みの間ずっとその事について考えていたからだろうか。学校にいる間もお兄ちゃんのことが頭から離れなかった。
受験ももうすぐだしこのままじゃダメだ。志望校の判定の結果は悪くはないけど、油断してはいけない。
