結局、お兄ちゃんの記憶は一切戻らないまま、私の冬休みは終わりを告げてしまった。
お兄ちゃんはまだ休暇があるようで、しばらくは家に居るのが幸いだ。


自分のせいで兄が記憶喪失になり、記憶を戻す方法が分からなくて悩んでいるなんて、友人に相談できるはずもなく……そもそも相談したところで、こんな経験をする人なんて滅多にいないんだから、解決策なんてわからないだろう。
モヤモヤと不安な気持ちを抱えながらも、出来るだけ周りには悟られないよう意気込みながら登校する。


「おい、ちゃんと前見ろ」

「わぁっ!?」


後ろから突然声をかけられ、驚いて転びそうになる。力強く腕を掴まれ、転ぶことは避けられたが、元凶の男は全く悪びれる様子が全くない。