「どんなに些細なことでも、君のことに関しては全て知りたいんだ。少しも忘れたくない。」
昔見た少女漫画のようなセリフに少し動揺する。ずっと私に優しいお兄ちゃんだったけど、こんなことを言われたのは初めてだ。
気恥ずかしくて、お兄ちゃんの顔を見ることが出来ない。
私はお兄ちゃんの特別だった。自分でもそう自覚できるほど大切にされて育ってきたと思う。家族だから、妹だからこんなに大切にしてもらえるんだって思ってた。嬉しい反面、たまたま彼の妹になれたってだけで特別扱いされるのは、ずっと悲しかった。
じゃあ、今はどうなの?果たして彼は私の家族と言えるのだろうか。記憶を失って、私のことを全て忘れてしまったのに。もし、家族じゃないとしたらどうしてこんなに優しくしてくれるんだろう。
彼が私を大切にするのは、こんなにも彼を想う気持ちは、家族愛じゃないのならばなんなのだろう。
どれだけ考えても答えは見つからない。
ふと、昔お兄ちゃんが言ったことを思い出した。
「妹を守るのが兄の役目だから。何があっても、お兄ちゃんが守ってあげる。」
