お兄ちゃんが帰ってきてから1週間が過ぎた。
その間も記憶は戻ることはなかった。思い出すために、何度もアルバムを見返したり、家族で遠出したりもしてみたが、効果はなかった。お兄ちゃんは「新しい思い出が出来てうれしい」と言っていたが、私はそう前向きに捉えることも出来なかった。


「はあ……」

「どうしたの?ため息なんてついて。」

「うーん、ちょっと…」


本人に伝えるわけにも行かず、口ごもってしまう。
出来るだけ普通に返事をしたつもりだったが、お兄ちゃんには気付かれたようで意味ありげに声を掛けてくる。


「最近は勉強も大変だし、気分転換にご飯でも行こうか?今日は天気がいいし、外に出ないのはもったいないな。」

「ご飯かあ……」