今日はやっとお兄ちゃんが退院する日だ。
あの日から何日か入院し、身体に異常もないということですぐに退院が許された。
まだ一人暮らしは危ないと、暫くお兄ちゃんは実家で暮らすことになった。
帰省の時とは異なり、こんなに長くお兄ちゃんと一緒にいられるのは本当に久しぶりだ。嬉しいはずなのに、素直に喜ぶことは出来ない。
家に関する記憶はなんとなくあるようで、説明はすぐに終わった。
1度身体を休めようと、リビングへ向かうと、お兄ちゃんは立ち止まった。
「どうしたの?」
「これ…」
指さしたのは古い柱だった。そこには線と私たちの名前が書かれている。
私とお兄ちゃんが一緒に暮らし始めてからずっとしていた身長比べだ。お兄ちゃんが家を出てからはやらなくなり、すっかり忘れてしまっていた。
それが無性に気になるようで、お兄ちゃんはじっと見つめている。
