1度溢れ出した涙は止まらない。嗚咽で上手く話すことが出来ず、子供のように泣きじゃくってしまう。
俯いて泣いていると、優しく頭を撫でられる感覚がした。大きくて、温かくて、私を安心させてくれる手。別人みたいなのに、やっぱり変わっていなくて感情がごちゃごちゃになる。
優しい手を振り払えるはずもなく、そのまま泣き続ける。暫くすると涙も治まってきたが、恥ずかしくて顔を上げることが出来ない。
「さっき、俺が怪我をしたのは自分のせいだって言ってたけど、どうでもいい人を庇うほど俺は優しくないよ。
あの時のことはあまり覚えてないけど、きっと君のことが何よりも大切だから……」
途中で言葉が途切れる。不思議に思い、顔を上げるとお兄ちゃんと目が合った。
優しい目をしている。いつものお兄ちゃんとは違うけど、どこか懐かしさを感じる眼差しだ。私のことは忘れてしまっても、忘れていないものもあるのだろうか。
また泣きそうになるが、それ以上涙は出なかった。
