はしゃぎすぎて疲れたのだろうか、家に帰るとアサはすぐに眠りについてしまった。さっきまで俺より夜更かしすると言っていたにも関わらず、静かな寝息を立てている彼女をそっと見つめる。
初めてキスをした時は、ただアサを安心させたい一心だった。
一緒に見た洋画で、恋人たちが泣きながらキスをするシーンがあった。俺もアサもまだ幼くて、悲しんでいる相手を慰めるための手段だと思っていた。いや、実際にそのような意味合いも兼ねているのであろう。
しかし少なくとも、俺にとってはそれだけではなかった。
ある日の夜、アサが暗闇が怖いと言って泣き出した。内緒でお菓子をあげても、読み聞かせをしても、どうしても泣き止ませることが出来なかった。とうとう困り果てた俺はあの日見た映画のことを思い出し、アサの額に唇を押し当てた。
