初めて人を好きになった。
昔から人に嫌われたくなくて、良い子のフリをしていた。家では父さんと母さんに褒められたくて、ワガママなんて一度も言ったことがなかった。両親に愛されないのなら、せめてたくさん友達を作ろうと、誰にでも笑って話しかけた。
努力の甲斐あってか、ずっと友人は多かったと思う。父さんの都合で引っ越しても、新しい環境ですぐに友人を作ることも出来た。みんなに好かれたくて、ずっと笑ってた。
あれは5度目の引越しだっただろうか。ふと気づいた。前の学校の友人は誰一人僕に連絡をしてきたことはない。何よりも悲しかったのはその事になんの感情も抱かなかったことだ。
人に好かれたいくせに、誰のことも好きになることが出来ない。なんと浅ましい人間なんだろうと、自分が気持ち悪くなった。
