ナギくんにはいつもお世話になってる。何かお返しがしたいし、何より勝ち負けに関係なく、一生懸命戦ったナギくんに私も報いたい。


「……ありがとう。でも、これは自分で決めてたことなんだ。負けたら君には伝えないって。」

「そんな、遠慮しなくても……」


私が食い下がってもナギくんはそれ以上何も言わず、静かに首を横に振るだけだった。


「今日は本当にありがとう。たくさん話せて嬉しかった。」

「……うん、私も!」


まだ話したいことはあったが、彼も疲れているだろうとそこで手を振って分かれた。
……ナギくんのお願いって何だったんだろう。どれだけ考えても私にはわからないことだ。本人がいいと言うのなら、私が無理やり聞き出すのも良くはないだろう。
思考を巡らせるのを止め、今日の思い出を反芻(はんすう)していく。初めての経験ばかりで楽しかった。最後の体育祭なのがとても惜しいが、きっと私は今日のことを忘れないだろう。