「…………わかったよ。もう好きにして。」
そう言って、その場を去ろうとするとハルマに手を掴まれた。
「…これ。」
「ハチマキ…?」
「ああ、必ず優勝して帰ってくるから、それまで持っててくれ。」
怪我をしているとわかっているのに簡単に返事することはできない。でも、ハルマに勝って欲しい気持ちも本当だ。相反する感情に揺られながらも、せめてもの抵抗で言葉には出さず、少し頷いた。
ハルマはホッとしたような顔をして校庭に目を向けた。
「そろそろ戻るか。ちゃんと水分補給しとけよ。」
「人の心配するよりまず自分のこと考えてよね。」
まだ完全に元に戻った訳ではないが、先程よりは幾分か空気が明るくなった。
2人で並んで校庭へ向かう。
リレーの結果がどうなったとしても、私の体育祭の思い出は良いものばかりだった。だから、勝っても負けても、一緒に楽しめただけで嬉しいんだよ。
彼にもその気持ちが伝わって欲しい。
