少し早めに来たため、まだ試合時間まで余裕があった。良い席を確保しようと応援席の方へ足を進めると、近くにハルマの姿が見えた。
「ハルマ選手、次の試合の意気込みは?」
手を丸めてマイクのように見立て、ハルマの口元へ近づける。ハルマは面倒臭そうに顔を顰め、口を開いた。
「今日は調子がいい……けどうるさい奴が応援に来るから調子悪くなるかもしれないですね。」
「ちょっと!」
「誰だとは言ってないだろ。自覚あんだな?」
先程の不機嫌そうな顔とは打って変わって、人をからかうことで機嫌が良くなったようだ。緊張をほぐしてあげようと思ったのに、ハルマはいつも通りで、心配した私がバカみたいだ。
