再び壁と一色の間に閉じ込められそうになって、胸板を押す。
ちょっとは改心してくれたのかと思ったのに──
「──なにしてる」
全身の毛が逆立つ、重い一言。
声色に感情の起伏はないのに、なぜか怒りが鋭く伝わってきた。
「あ、マダラ」
対照的に、一色は表情を綻ばせる。この人はやっぱり、空気を読むとか相手の気持ちを考えるとか、そういうの苦手なタイプっぽい。
わからないかな。今、絶対喜ぶ場面じゃないの。
長い駐車場の横をずんずん歩いて近付いてくる斑くん。
足がすくんで動かない。
この状況、どうやったって私達に分が悪い。
私は一色に危害を加えられていないし、一色は私に相談を聞いてほしいだけだった。
でも……一色には前科がある。
たとえ真実を話したとしても、言い訳と捉えられてしまうだろう。



