斑くんの激重愛に抗うためには



「っ、斑くんが喧嘩した後、どんな顔してるか知ってますか? 強いからって、苦しんでないわけじゃないんです。あの人は、全部、我慢する人なの……っ!」



 声を張り上げる。一色はビクリと動揺して、目を見開いた。

 呆然と私を眺める彼を見るに、人間らしい感情はあったみたい。


 元々の静けさに戻っただけなのに、さっきより静寂が増した感覚だった。

 一色は、ハッと私の肩から手を離し、それを握り拳に変える。



「……あー、待って。違う、そういうつもり、なくて」



 そしてポツリと、弱々しく呟いた。

 え……?



「おれ、わかんない。……喧嘩以外で、仲良くする方法」

「……な、なにそれ。普通に話しかけて、コミュニケーションとれば……」



 何気なく発してしまったのが、悪かった。



「じゃあ、『普通』じゃないからかな?」



 自嘲に近い笑みを、一色が浮かべたから。