そこでようやく、地面に下ろされる。
息をつく暇などない。服を整える私の目前に、一色は顔を近付けた。
ご機嫌なにこにこ笑顔。
純粋な悪意──彼を形容するならこう表現する他ない。
「助け、呼ばなかったね? もうちょっと怖がるかと思った」
「……私に話があるんですよね」
「うん。おれの彼女にね」
「か、のじょ……じゃないですけど」
あの一方的な命令が今も続いていたなんて。
そんなわけない。今まで接触してこなかったんだから。さすがにただの冗談にさせてほしい。
自分を保たないと。飲み込まれないようにしなきゃ。
「ほんとスオウちゃんて反抗的。思い通りになってくれないところ、マダラにそっくり」
突然、視界がぐらついた。
一色の腕が伸びてきたと思ったら、背中が壁に叩きつけられる。



