私にだけ用があるってこと? じゃあ斑くんはいらないの?
……あんなに斑くんしか見えてなかったのに?
「大丈夫、もう乱暴な手は使わないよ。マダラがバケモノだってわからされたしねえ?」
「……」
信じていいのかな。こんな人の言葉……。
どこまで行くつもりなのか、一色はぴょんぴょんと跳ねるように階段を下っていく。
まるで散歩するみたいに。たまに鼻歌まで交じらせて。
「……下ろしてください」
「まあ待てよ。もうちょっとだからさ~」
一色の足は止まらない。彼はまっすぐ、一定の速度で、決められた行き先を進んでいく。
出入り口から出ればいいのに、ガラガラと窓を開けて外へ飛び降りた。
校舎裏の駐輪場。静まり返った空気。
そこには誰もいない。ただ、私と、一色だけ。
ごくりと、唾を飲み込む音が不自然に鼓膜を震わせた。



