こんな色気を醸し出されちゃうと、普段意識していなかったところまで発見してしまう。

 まつげ、わりと長いな、とか。薄い唇、少しかさついてるな、とかさ……。

 なんでも良く見えるのは、雰囲気にのまれてるせいだと思いたい。



「俺達喧嘩中なんだろ?」

「え、? ぁ……はい」

「うん、だから──」



 下からすくうように、鋭い瞳に見つめられている。

 それが、細められたかと思ったら。



「俺もいやがらせ?」



 今世紀最大の笑顔が投下された。

 こてんと首を傾けるあざとさ付き。


 不覚にも、ダイナマイト級の胸キュンが炸裂。

 斑くん、こんな笑顔もできたんだ……!

 状況はちょっと微妙だけど、引き出せたのが私で嬉しい。



「安心しろ。食事も風呂も着替えも、全部俺が面倒見てやるから」

「えっ?」



 一瞬で嬉しさを噛み締めるはずの時間が消える。

 なんか、不穏なことを言われたような……?