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「斑、くん……? えっと、」

「……」



 ……さっきから、全然離してくれない。


 帰るまではずっと手を繋いでて、部屋に連れ込まれたかと思ったらこれだ。玄関先から一歩も動けず、靴も履いたまま。

 斑くんの大きな体に包まれている。とくん、とくん、って心臓の音。痛くないくらいの締め付けが気持ちいい。



「……やっぱあんた、俺と一緒にいるべきじゃねぇよ」

「う……、いやです」

「っ、あんたの気持ちは、聞いてない」



 わかってる。

 今回のようなことがまたいつ起きるとも限らないし、斑くんに迷惑をかけるだけだって。


 でも、だったら、どうして今斑くんは離れてくれないのかな……?

 言ってることと矛盾してる気がするけど。



「……私達、喧嘩中なの忘れちゃいました? 斑くんのやってほしくないことは、嫌がらせのためにやるんです」



 私からも、背中に手を回す。