斑くん、『小鳩』って何度も名前で呼んでくれてた……。

 それだけで胸がいっぱいだ。


 はぁ……、吐いた熱い息が顔全体を温める。

 ああもう、絶対顔赤いよね。



「小鳩」

「ふぁっ、こ、小鳩です!」



 そうだよ、のんきにときめいてる場合じゃない!

 呼び掛けでガバッと体を起こす。眼前には、しゃがんで私に手を差し出す斑くんがいる。

 あ、この間と逆の立場……。


 あれっ。

 周りを見渡すと、一色のみならず、倉庫の中にいた全員が地面に突っ伏していた。

 意識がある人もいるみたいだけど、指くらいしか動かせていない。



「も、もしかして、全部斑くんが……?」

「ああ。今の内に逃げるぞ」



 斑くんは、私の手を取って走り出す。

 すごすぎて言葉が出ない。これはみんなから恐れられるわけだ。

 ……私にはヒーローにしか映らないけどね。



 倉庫から出る間際、最後に全体を確認したら、ソファー近くにあるテーブルの下で進藤くんが隠れているのを見つけた。

 こっちに何かするつもりはなさそうで、私にだけわかるように手を振ってくる。

 本当なんか色々と、ちゃっかりしてるなあ……。