斑くんを幸せにするのは……私だもん。

 ずっとそう思ってきたんだから、急に横から奪おうとしないでよ。


 立ち上がった私を進藤くんが止める。前に進もうとするたび、手首を掴む力がこもって痛い。



「……止めないで」

「邪魔しちゃだめだよ」

「邪魔してるのはあっち! 斑くんは私の……っ」



 言ってから、ハッとする。

 一色は斑くんのことを認めてくれる、私の求めていた存在だ。

 だけど全然喜べない。嫉妬心すら芽生えている。


 つまり、斑くんの良いところを知っているのは自分だけなのだと、優越感に浸っていて。

 本当は斑くんを独り占めしたかっただけ──。


 自覚した途端、無我夢中で進藤くんを振りほどいた。

 身体中を巡る熱がエネルギーに変わり、一色目掛けて全力疾走。


 ドンッ……。

 鈍い音と共に、一色へ突進した。