「座り直すのはいいけど、逃げちゃダメだよ」



 ちゃんと見てて、と進藤くんは二人のことを指差す。

 向かい合う二人から放たれる空気は真逆のものだ。

 方や険悪、方や歓喜。

 満面の笑みで話しかける一色を、斑くんは冷たくあしらっている。



「ようこそ! 来てくれて嬉しいよ! なーんだ、早くこうしておけばよかったんだ!」

「脅して連れてきた、な。お前が仲間に俺を尾行させてたんだろ。いいから、小鳩を解放しろ」

「え~やだよ。なんのため人質に取ったと思ってんの」



 一色は斑くんの首へ腕を回し、顔を近付けた。

 キスしそうな勢いだ。気持ちがあまりにも斑くん一直線だから、本当にしてしまうんじゃないかとハラハラした。



「マダラ、おれのになれよ。そしたらあの子共々幸せにしてやる」



 ある種の告白。

 先を越されたような敗北感が腹の中で渦巻く。