「また喧嘩しちゃったんですか?」
ビルの立ち並ぶ路地裏。ボロボロになった彼の前にしゃがむと、虚ろだった瞳が私に向いた。
満足して放心していたのかな。暇になると喧嘩を吹っ掛ける悪癖だけはどうしても直らないみたい。
あーあ、生傷増えてる。せっかく元はいいのに、台無しだよ。
「帰りましょうよ。傷の手当てをしなくちゃ」
「……なんで来た」
手を差し出したのに、怪訝な表情をされて握ってもらえない。
「いえ、たまたまですよ? 斑くんがよく喧嘩してるところだなって考えながら通ったら、本当にいたので」
「今日は……友達と帰るって」
「はい、近くにアイス屋さんがあるんですよ。さっき食べてきました」
「友達とかいうのはどこに行ったんだ」
ああ、気にしてくれてるのか。
こっちから手首を掴みに行って強引に立たせた。ふらついた斑くんを受け止め、にこーっと笑顔を浮かべてみせる。



