今日から私は上司の奴隷になりました

「よし、いい子だ」

”いい子だ”って、もしかして、褒められた?
ちょっと嬉しいかも……って、私ったら、もう奴隷根性になってるの?

「二人の時は、俺を”ご主人様”と呼べ」

「それはさすがに、ちょっと……」

「おまえは俺の奴隷なんだから、当然だろ?」

「でも……」
「ばらしても、いいんだな?」

「わ、わかりました、ご主人様」

「それでいい。今後、俺に逆らう事は一切許さない。俺が言う事は、何でもやってもらう」

「何でも、ですか?」
「何でもだ」

という事は、もし体を要求されても、私は逆らえないって事?
つまり、ただの奴隷ではなく、”性奴隷”になれって?

そんなの……アリかも。この人の性奴隷なら。

あ、それはないわ。だって、バーで別れ際に、『俺に二度と触るな』って言われちゃったもん。


「あのー、ひとつ聞いていいですか、ご主人様?」

「なんだ?」

「部長が言った”特別な業務”って、何ですか?」

「それはまだ言えない」

「社長が関係してるんですか?」

今、ご主人様の眉がピクッってなった。やっぱり図星なんだわ。

「ルールをひとつ追加する。余計な詮索はするな」

どんな業務かも分からずに、私に仕事をしろって言うの? そんなの無理よ。

「それと、ルールと言う程ではないが、毎朝コーヒーを買って来てくれ。2階のタリーズで、ブラックでいい。サイズはGrandeだ。これは一週間のコーヒー代と諸々の費用だ。足りなかったら言ってくれ」

そう言いながら、ご主人様は財布から1万円札を出して私に手渡した。

「一週間毎に精算すればいいんですね?」

「それはしなくていい。俺は細かい金のやり取りは嫌いだ」

「余ったお金はどうしたらいいんですか?」

「おまえにやる」
「あ、そうですか」

ご主人様って、お金には無頓着なんだ。そう言えばブラックカードを持ってたし、相当なお金持ちなのね。

あ、ブラックカードで思い出した。

「バーでは奢って頂いて、ありがとうございました」

「今更だな」
「ですよね。あの時はパニくっちゃって……」

「だろうな」
「では、早速コーヒーを買って来ますね?」

「おお、頼む」

ふうー。変な事になっちゃったなあ。