翌朝、私は勤務先である自動車メーカーの本社ビルに入り、エレベーターで上がって職場の総務部へ出社した。
私は新卒でこの会社に入社して以来、総務部一筋で早5年が過ぎ、この春に6年目を迎えていた。ちなみに役職は、社歴の割には異例に早く、係長のポストを頂戴している。
ロッカールームで制服に着替え、職場で始業の準備などをしていたら、総務部長が職場へ入って来た。そして部長に続き、背がすらっと高く、スマートな男性が入って来たのだけど、なんとその男性は、昨夜のど真ん中ストライクの彼だった!
昨夜の別れ際に、彼が『明日判るよ。会社で』って言ったのは、この事だったんだわ。
「みんな手を止めて、集まってくれ」
部長の呼び掛けで、総務部のみんなはザワザワしつつ、部長と昨夜の彼の前に集まった。
私は、近くにいた課長の武田さんに、小声で「何事ですか?」と聞いたのだけど、武田さんは、『僕は知りません』と言いたげに、首を横に振った。
果たして部長は何を言うのか。そして、昨夜の彼の正体は何なのか。私はハラハラドキドキしながら、部長の言葉を待った。
「えー、急な人事で申し訳ないが、こちらは本日付で総務部に配属された、課長の本阿弥 真一郎君だ」
「本阿弥真一郎です。よろしくお願いします」
課長って事は、私の上司かな。でも、担当業務が私と違えば、実質的には無関係なわけで、彼はどんな業務を担当するんだろう。福利厚生か社員のID管理だと、私の直属の上司になるんだけど、どうなんだろう。
そうであって欲しくないような、そうであって欲しいような、複雑な心境なのだけど……
「本阿弥君は特別な業務を担当するので、みんなの業務には影響しない。ただし……」
なんだ、私の上司じゃないんだ。ホッとしたような、残念なような、はっきりしない気持ちでいたら、
「野田君」
なぜか部長は、私の名を挙げた。
私は新卒でこの会社に入社して以来、総務部一筋で早5年が過ぎ、この春に6年目を迎えていた。ちなみに役職は、社歴の割には異例に早く、係長のポストを頂戴している。
ロッカールームで制服に着替え、職場で始業の準備などをしていたら、総務部長が職場へ入って来た。そして部長に続き、背がすらっと高く、スマートな男性が入って来たのだけど、なんとその男性は、昨夜のど真ん中ストライクの彼だった!
昨夜の別れ際に、彼が『明日判るよ。会社で』って言ったのは、この事だったんだわ。
「みんな手を止めて、集まってくれ」
部長の呼び掛けで、総務部のみんなはザワザワしつつ、部長と昨夜の彼の前に集まった。
私は、近くにいた課長の武田さんに、小声で「何事ですか?」と聞いたのだけど、武田さんは、『僕は知りません』と言いたげに、首を横に振った。
果たして部長は何を言うのか。そして、昨夜の彼の正体は何なのか。私はハラハラドキドキしながら、部長の言葉を待った。
「えー、急な人事で申し訳ないが、こちらは本日付で総務部に配属された、課長の本阿弥 真一郎君だ」
「本阿弥真一郎です。よろしくお願いします」
課長って事は、私の上司かな。でも、担当業務が私と違えば、実質的には無関係なわけで、彼はどんな業務を担当するんだろう。福利厚生か社員のID管理だと、私の直属の上司になるんだけど、どうなんだろう。
そうであって欲しくないような、そうであって欲しいような、複雑な心境なのだけど……
「本阿弥君は特別な業務を担当するので、みんなの業務には影響しない。ただし……」
なんだ、私の上司じゃないんだ。ホッとしたような、残念なような、はっきりしない気持ちでいたら、
「野田君」
なぜか部長は、私の名を挙げた。



