今日から私は上司の奴隷になりました

あまり遠回しなのはどうかと思い、割とストレートに迫る事にした。

「ねえ、ここを出ない? 私、なぜか体が疼いてるの」

私はそう言って、左手を横にスライドして彼の股間を触った。もちろん、会ったばかりの男性に、こんな事をするのは生まれて初めてだ。

ところが、彼は何も言わず、涼し気な目で私を見るだけだった。もちろん、怯んでなんかいられない。

「独り者同士、慰め合わない?」

私は彼の耳元に口を寄せ、息を吹き掛けるようにしてそう言った。それと同時に、私は左手を動かし、彼の股間を摩ってみた。

それでも彼は何も言わないので、今度はムズッと、彼の”モノ”を握ってみた。

あ、結構大きいかもしれない……

私は早くも体の芯を熱くし、上目遣いで彼の言葉を待っていたのだけど……

「がっかりだな、野田恵子」

えっ?

私が待っていた言葉とは、まるで違う言葉が返ってきた。この人は、なぜ私の名前を知ってるの?

「神徳が絶賛してたから、期待したんだがな……」

”神徳”って、うちの会社の社長の、あの神徳直哉(こうとくなおや)さんなの?

「あなたのお友達って、うちの会社の社長なの?」

「そうだ」

「じゃあ、人探しの相手は……」

「君だ」

えーっ、嘘でしょ? 信じられなーい!

「マスター、会計をお願いします。これで、彼女の分も」

そう言って、彼はカード入れからブラックカードを取り出し、マスターへ渡した。

「わ、私は、今夜はどうかしてたの。いつもはあんな事はしないの。本当よ?」

「それは、どうだか」

「信じてください」

「じゃ、俺は帰るんで」

私の話を聞こうともせず、立ち去ろうとする彼の腕を、私は後ろから掴んだのだけれど……

「触るな!」

すぐにその手を振り解かされてしまった。

「俺に二度と触るな。この……エロ女」

”エロ女”は酷いと思った。でも、私が彼にシタ事を思えば、それは無理もないと思う。

「あの、せめてお名前だけでも、教えて頂ければと……」

「明日判るよ。会社で」

と言い残し、彼は店を出て行ってしまった。

会社でって、どういう事? 社長から聞いた話って何? 彼は私に何を期待してたの?

「恵子ちゃん」

私が頭の中を疑問符でいっぱいにしていたら、マスターが私に話し掛けて来た。

「誘い方を、間違えたようだね?」

正にそれなのよ。今や手遅れなんだけど……