今日から私は上司の奴隷になりました

「お会いするのは、初めてよね?」

「そうです。ここへ来たのは初めてだから」

「どうして、ここへ?」
「友人から言われたんです。ここへ来れば、ある人物に会えるだろうって」

「まあ、人探しでいらしたのね。その方には、お会い出来たの?」

「はい、会いました」
「それは良かったですわね?」

本当に良かったと、私は思った。彼は過去形で話したので、既に人探しの相手はここに居ないはずだから。もしこれからだと、彼をナンパするのを、私は諦めるほかなかったから。

「私はひとりでよく来るの。今夜みたいに、ひとり寂しくお酒を飲むの」

私は、”ひとり”を2回言って強調した。それはなぜかと言うと……

「恋人は、いないんですか?」

そう。この質問を期待して、私は”ひとり”を強調したわけよ。

「それが、いないの。なぜだと思う?」

「さあ、分かりません。貴女のような綺麗な女性が、独りだなんて」

「またまた、お口がお上手なんだから……」

と言いながら、私は左の手を彼の腿に乗せた。

「貴方は? 恋人はいるのかしら? 奥さんがいたりするの?」

「いいえ、俺も独りです」

よっしゃ!

「あら、こんなに素敵な方なのに?」

「そんな事はないですよ」

「またまた、謙遜しちゃって……」

と言いながら、私は乗せたままの左手で、彼の腿をムンと握った。彼の腿は、思ったよりも硬く、筋肉質だった。

さて、この後私は、どうやって迫ればいいのかなあ。