今日から私は上司の奴隷になりました

「そうよ」

「優しい彼氏さんで羨ましいなあ。ミユキさんは彼氏さんの事、何て呼ぶんですか? 私は主人の事、”ご主人様”って呼んでるんです。主人って、意外に俺様なんです」

「あっそ」

しまった、自分の事を言い過ぎちゃった。

「普通は名前で呼びますよね? あるいは、あっくんとかたっちゃんとか、愛称で。ミユキさんは何て呼んでるんですか?」

「”あんた”よ」

ダメかあ。名前を聞き出すのは諦めて、”彼氏”の特徴を聞き出そうと思う。

「彼氏さんって、どんな人なんですか? 眼鏡は掛けてるんですか?」

「掛けてるよ。あんたのと同じような、ダサい眼鏡」

やった! 情報ゲットだわ。”ダサい”は酷いけども。

本当はもっと”彼氏”の容姿を聞き出したいけど、根掘り葉掘り聞くのは警戒される恐れがあるのでやめた。

「そんなお金持ちの彼氏、どうやってゲットしたんですか?」

何でもいいから”彼氏”の情報を聞き出そうと思い、そんな無茶振りを言ってみた。

「何でそんな事を聞くのよ?」

「え? パパ活の参考にしようかな、って……」

私はそう言ってエヘヘと笑ってみせた。

”パパ活”は咄嗟に思い付いたのだけど、よくもまあそんなものを思い付いたものだと、自分で感心してしまった。

「あんた、旦那がいるのにそんな事すんの?」

「だって、私もそういうネックレス、買って欲しいんだもん。やっぱりアレですか? つまり、色仕掛けとか?」

「あんた、地味な顔でよくそういう事、言うね?」

「だって、女の武器と言えば、それしか想い付かなくて……」

「食い物、って手もあるよ」

「食べ物ですか?」
「そう。相手の胃袋を掴むのよ。アイツ、私が飯を作ってやると、何でも『旨いっす』とか言ってガツガツ食べてる」

『旨いっす』かあ。変わった喋り方するのね。これも情報ゲットだわ。

他には”彼氏”の情報は得られなかったけど、2つゲットしたのは大きな成果だと思う。つまり、黒縁の眼鏡を掛け、『旨いっす』と言う男性。