今日から私は上司の奴隷になりました

さて、どうしましょう。

ど真ん中ストライクの彼は、すぐに前を向き、今はまたスマホを見ている。このまま、彼の方から近寄って来るのを待つべきだろうか。昨日までの私ならそうしたと思う。

でも、今夜の私は違うのだ。運を待つなんて、ダメだ。そう、運は待つものではなく、掴むものなのよ。

という事で、私は人生初のナンパという行動に出る決意をした。所謂”逆ナン”だ。でも、経験のない私には、その方法が判らない。

うーん、と悩んでいたら、ふとネット小説か何かで目にした、とても魅惑的なセンテンスが私の脳裏を過ぎった。それは……

”体から始まる恋”

そう、それよ。それで行こう。私のナイスなバディを、使わない手はないわ。

今夜の私の装いは、パープルのブラウスに黒のタイトスカート。このままでは、少し色気が足りない気がする。

そこで私は、ブラウスのボタンをひとつ外してみた。全然足りない。もうひとつ外してみた。すると、レースの黒いブラがチラチラ見え、Dカップの胸の谷間が覗いている。

うん、いい感じにエロいわ。

ふと前方からの視線を感じ、顔を上げたら、カウンターの向こうにいるマスターと目が合ってしまった。初老のマスターは、すぐに私との視線を反らしたものの、頬の辺りが赤くなっているのを私は見逃さなかった。

「なんか、暑くって……」

私は胸元をパタパタさせて、更にエロさを増幅させた。

「エ、エアコンの温度、下げましょうか?」

「ううん、大丈夫」

今のマスターの反応を見て、これならイケると私は判断した。

水割りの残りをグイっと飲み干し、気合を入れると、私はカウンターの椅子から降りた。そして、バッグを掴んで向かう先は、ターゲットのど真ん中ストライクの、彼だ。