「舞は、本阿弥さんと私が別室で仕事をしてるって、知ってた?」
「ううん、知らなかった。別室でって、彼と二人きりなの?」
「うん」
「大丈夫なの?」
「何が?」
「だって、好きな人と密室で二人きりなんでしょ? そんな状況で仕事出来るの?」
「それは全然大丈夫。私、本阿弥さんに嫌われてるし。前に『俺に触るな』って言われちゃった」
バーでだけど。
「ふーん、そうなんだあ」
「今日から本阿弥さんの指示で作業を始めたんだけど、それが何のための作業なのか、教えてくれないの。『まだ言えない』って。私の方も守秘義務があるから、作業の中身は言えないんだけどね。
本阿弥さんは社長から何かを依頼されてると思うんだけど、それが何なのか、舞なら知ってるかなと思って」
「私もそれが気になってるけど、直哉さんは教えてくれないの。守秘義務があるから、知ったとしても恵子に言えないんだけどね」
「私達って、守秘義務でがんじがらめだね?」
「確かに、そうだね」
「向こうから教えてくれるのを、待つしかないか……」
とは言ったものの、やっぱり知りたいなあ。そう思っていたら、
「想像するだけなら、守秘義務に反しないよね?」
舞が前屈みになり、声を落としてそう言ったので、私もそれにならい、
「そう思うけど、舞は何か想像してるの?」
と小声で返した。
「この間、T社が新型エンジンを発表をしたのは、恵子も知ってるでしょ?」
「うん、知ってるよ。うちの社の『ガッちゃん』の改良版みたいなエンジンでしょ?」
「そう。あれにすごく怒ってたの。直哉さんや開発部の人が。本阿弥さんが来た事と、それが関係してるんじゃないか、って私は思うんだけど、恵子はどう思う?」
「ああ、なるほどね。ん……私、判ったかもしれない」
舞には言えないけど、私がご主人様から命じられて個人情報を調べた人達の殆どは、開発部所属だった。それを合わせて考えれば、辿り着く答えは一つしかないと思う。
「私も、直哉さんが本阿弥さんに何を依頼したのか、判ったと思う」
「せーので言ってみようか? 小さい声で」
「うん」
という事になり、舞と私はせーので言ってみた。
「産業スパイは誰か」
「産業スパイを捕まえろ」
ちなみに前者は舞で、後者は私。目的は少し違うけど、”産業スパイ”という点は二人とも一致した。
「ううん、知らなかった。別室でって、彼と二人きりなの?」
「うん」
「大丈夫なの?」
「何が?」
「だって、好きな人と密室で二人きりなんでしょ? そんな状況で仕事出来るの?」
「それは全然大丈夫。私、本阿弥さんに嫌われてるし。前に『俺に触るな』って言われちゃった」
バーでだけど。
「ふーん、そうなんだあ」
「今日から本阿弥さんの指示で作業を始めたんだけど、それが何のための作業なのか、教えてくれないの。『まだ言えない』って。私の方も守秘義務があるから、作業の中身は言えないんだけどね。
本阿弥さんは社長から何かを依頼されてると思うんだけど、それが何なのか、舞なら知ってるかなと思って」
「私もそれが気になってるけど、直哉さんは教えてくれないの。守秘義務があるから、知ったとしても恵子に言えないんだけどね」
「私達って、守秘義務でがんじがらめだね?」
「確かに、そうだね」
「向こうから教えてくれるのを、待つしかないか……」
とは言ったものの、やっぱり知りたいなあ。そう思っていたら、
「想像するだけなら、守秘義務に反しないよね?」
舞が前屈みになり、声を落としてそう言ったので、私もそれにならい、
「そう思うけど、舞は何か想像してるの?」
と小声で返した。
「この間、T社が新型エンジンを発表をしたのは、恵子も知ってるでしょ?」
「うん、知ってるよ。うちの社の『ガッちゃん』の改良版みたいなエンジンでしょ?」
「そう。あれにすごく怒ってたの。直哉さんや開発部の人が。本阿弥さんが来た事と、それが関係してるんじゃないか、って私は思うんだけど、恵子はどう思う?」
「ああ、なるほどね。ん……私、判ったかもしれない」
舞には言えないけど、私がご主人様から命じられて個人情報を調べた人達の殆どは、開発部所属だった。それを合わせて考えれば、辿り着く答えは一つしかないと思う。
「私も、直哉さんが本阿弥さんに何を依頼したのか、判ったと思う」
「せーので言ってみようか? 小さい声で」
「うん」
という事になり、舞と私はせーので言ってみた。
「産業スパイは誰か」
「産業スパイを捕まえろ」
ちなみに前者は舞で、後者は私。目的は少し違うけど、”産業スパイ”という点は二人とも一致した。



