今日から私は上司の奴隷になりました

「カツオのお刺身、美味しいね?」

「うん、初ガツオの旬だからね」

舞にご主人様との馴れ初めは説明したので、次は彼の事を聞いてみようと思う。今のところ、私はご主人様の事を何も知らないので、少しでも知りたいと思うから。

「舞は本阿弥真一郎さんを知ってるのよね?」

「うん、知ってるよ。今日も社長室に来てたし」

「あ、そうだよね。私は何も知らないの。舞が知ってる範囲でいいから、彼の事、教えてくれる?」

「わかった。まず彼は、御曹司なの。それくらいは恵子も知ってるよね? 総務だし」

御曹司!?

「知らなかった」

「そうなの? 変わった苗字だからわかると思ったけどなあ。彼は本阿弥財団会長のお孫さんなのよ」

「ああ、そうか。どこかで聞いた苗字だとは思ったけど、うちの会社の大株主の、本阿弥会長の孫かあ。気付かなかったなあ、総務なのに」

どうりでお金持ちなわけだ。

「それでね、直哉さんとは、高校からの親友なんだって。彼も優秀で、C大の法科を出てるそうよ。妹さんはおバカだけどね」

「舞は本阿弥さんの妹さんを知ってるの?」

「うん、直哉さんの元カノだから」

色々ありそうだけど、妹さんについてはスルーしとこうっと。

「じゃあ、本阿弥さんって、弁護士さんとか、そういう人なの?」

「ううん、司法試験は合格してるそうだけど、彼はフリーの探偵さんみたいよ?」

「た、探偵? うっそー、信じられない!」

「あ、今のは守秘義務違反になるかも。黙っててね?」

「うん、わかった」

それにしてもご主人様が探偵だなんて、思いもしなかったなあ。