今日から私は上司の奴隷になりました

1階のロビーに降りると、既に舞はそこにいて、私を待っていてくれた。

「待たせちゃった?」
「ううん、私も今来たところー。ねえ、”ご主人様”って誰なの?」

「それはね……後で話すよ。いつもの居酒屋さんに行く?」

「うん、いいよ。行こう行こう」

という事で、舞と私は会社から程近い、よく行く居酒屋さんへ行った。夕ご飯を兼ねて。

「かんぱーい」

私は生ビールの中ジョッキで、舞はなぜかノンアルのビールで乾杯した。ノンアルと言えば、私はお昼にご主人様と飲んだ赤ワインを思い出した。その時に私はご主人様の笑顔にやられ、彼に恋しちゃったのよねえ。うふふ。

「なんか今日の恵子、楽しそうだね。何かいい事でもあったの?」

「その前にさ、なんで舞はノンアル飲んでるの?」

「それはね……妊娠しちゃったから」

舞は恥ずかしそうに、でも嬉しそうに微笑んでそう言った。

「えーっ、マジで?」
「うん。まだ病院には行ってないけど、間違いないと思う」

「そっかあ。おめでとう。良かったね!」

「ありがとう。恵子も妊娠しなよ」

ブッ

舞がいきなり変な事を言うから、私はビールを口から吹いてしまった。

「もう、変な事言うから、吹いちゃったじゃない」

私はおしぼりでテーブルを拭きながら言ったのだけど、

「変かなあ。子ども同士も同い年なら、恵子と話が合うと思ったんだけどなあ」

「それは解るけど、私は未婚なのよ? 妊娠以前に、相手がいないでしょ?」

「でも、恵子にも”ご主人様”が出来たんでしょ?」

ああ、そういう事か。

「それは説明するから、その前に食べ物をオーダーしようよ?」

「うん、そうだね。何食べようかなあ……」

メニューを眺めたけど、結局はいつもの定番の、お刺身、お新香、冷やっこ、肉じゃが、ブリ大根なんかをオーダーした。

私はそれをしつつ、ご主人様の事を舞にどうやって、どこまで説明しようか考えていた。