とある村の怖い話


『はっはっ……み、みなさんこれを見てください!』
息を切らしたトミーがカメラを向けた先には古ぼけた木製の標識だった。

それは杭のように地面に突き立てられていて、かすれた文字「いまよい村」と書かれているのが読み取れた。
『いまよい……村? という場所の近くに僕たちはいるみたいです! みなさん! 僕たちの現在地はいまよい村です!』
トミーが歓喜して叫ぶ。
遅れてやってきた美加も標識を見て笑顔になった。

『この先に行けば村があることがわかりました。その村の人たちに助けを頼みたいと思います。さぁ、行こう』
トミーが美加に手を差し出し、ふたりはまた歩き出した。

そこでブツンッと動画は途切れてしまった。
「いまよい村だって。これでトミーも美加さんも助かるね」
夏美がホッとした表情で言う。

「よかったな。これで夏美の心配事はひとつ減るみたいだ」
雄一の顔にはまだトミーの行方不明が演出であると、疑っていると描いているようだった。