「なんだよ雄一、驚かせるなよ」
雄一と呼ばれた男が笑って「悪い。玄関先でなにしてるんだろうと思って出てきたんだ」
「撮影するって言っただろ。それっぽく見せるために玄関に入る前から撮ってたんだよ」

「なんだ、そういうことか。夏美は2階で待ってるぞ」
「そういうのも順序だてて紹介するつもりだったのに、お前のせいで台無しだぞ!」
「はははっ。俺のおかげで夏美が了承してくれたんだから、これくらいのことで怒るなって」

雄一が達也の前を歩いて玄関に入っていく。
「おじゃましまぁす」

「まぁ上がれよ」
「だーかーら! ここは雄一の家じゃねぇだろ!」
前を歩く雄一の後頭部にツッコミが入る。

階段が現れてふたりは2階へと移動した。
「夏美、達也が来たぞ」
「ちょっと待って。ドアの前で雄一の自己紹介を取りたいんだ」

「俺の? そんなの適当でいいだろ」
「ダメだっつーの! 俺は本格的なドキュメンタリーが撮りたいんだから」
「だったら尚更取り直しとか必要ないんじゃないか?」