とある村の怖い話


☆☆☆

「えーっと、今雄一のバイト先のスーパーまできてます」
自販機の横に設置されているベンチに雄一が座っていて、缶コーヒーを飲んでいるところだった。
「なんだよ達也。こんなところまで撮影しに来たのか?」

「へへっ。お前のバイト先知っといてよかったよ」
「バイト先のこと話すんじゃなかったな」
顔をしかめる雄一の隣に達也が座り、「まぁまぁ、そう言うなよ」とたしなめた。

「休憩時間はどれくらいある?」
「残り15分くらいだけど?」
「それならちょっと話ができるな」

「話って、動画撮ってるってことは夏美のことだろ? なんで俺に?」
「そりゃあ長年一緒にいたヤツから話を聞くのだって定番だろ? 幼馴染が引きこもりって、どういう心境なのかなぁって」
そう言った瞬間雄一が達也の頭を叩はたいた。

「イテッ」と達也が声を上げ、画面がブレる。
「お前さぁ、もっと相手のこと考えた質問ができないわけ?」

「デリケートな問題なことはわかってるって。だからこそ、雄一に頼んだんだろ? 他の人には絶対聞けないんだからさ」
雄一が盛大なため息を吐き出してコービーを飲み干し、ゴミ箱へと投げ入れる。
「まだ動画撮影は始まったばかりだろ? そういう質問はもう少し後で頼むよ」

「でも、それじゃ話が全然進まない。そろそろ引きこもりになった原因とかにも迫っていきたいし」
「お前、夏美と会ったのは何回だ? まだ3回だろ? どうしてそんなに焦ってんだよ」
「どうしてってそりゃあ……」

達也が途中で押し黙り、それに気がついた雄一が睨みつけてくる。
「さっさと終わらせて夏休み満喫したいからか?」
その質問に達也は答えられなかったが、図星だったようで画面が地面を映し出した。

「俺、そろそろバイト戻るから。お前もそんなことばっかしてないで他のこと頑張れよ」
「ちょっと、待ってくれよ」
カメラが再び雄一の姿を捉えた時、雄一はズボンのポケットからスマホを取り出したところだった。
「夏美ちゃんか?」