「突然おしかけてすみません。電話で説明した通り、この子たちが行方不明事件について知りたいみたいなの」
「はじめまして。こっちへどうぞ」
通されたのは小さな応接室だった。
事前にコーヒーの準備をしてくれていたようで、豆の匂いが漂ってくる。
雄一と達也と裕香さんの3人は横並びになてソファに座った。
気を抜くと体が沈み込んでしまうので、達也は何度も座り直していた。
「10年前にいなくなった男の子の名前は葛西真司くん。中学3年生の15歳だった」
事務員さんが当時葛西真司が在籍していたクラス写真を持ってきてくれた。
「これがその子だよ」
カメラ内に映し出された少年は周りよりも一回り背が小さく、細くて色白で、パッと見と少女のようだ。
「葛西くんは病弱でね、学校も休みがちだった。それが原因で友達と呼べる子がほとんどいなかったようなんだ。よく花壇の前でひとりで座り込んでいたよ」
「失踪する前になにか、変わった様子はありませんでしたか?」
「元々ちょっと不思議な子ではあったけれど、特別変わったことはなかったなぁ……あ、でも、いなくなる前日の学校ではすごく明るく振る舞ってたようだよ。クラスメートと冗談を言い合ったりしてね。あの子もようやく友達ができたと思って、安心したんだけどねぇ」



