前回のあらすじ:
地方出身で内向的な大学1年生・星野紬は、VR恋愛ゲーム『エターナル・コネクト』のAIカレシ「カイリ」に心の支えを求めていた。ある日、大学の講義で、大手IT企業の御曹司でAI研究の天才である3年生・一条蓮のふとした声や仕草が、カイリと瓜二つであることに気づき、激しく動揺する。
第二話
柱:大学の大講義室・午後・第1話ラスト直後
床に落ちたシャープペンシル。紬、顔面蒼白のまま、一条蓮の姿を凝視している。
蓮は、紬の視線に気づいたものの、特に表情を変えることなく、他の学生との会話に戻る。そのクールな横顔が、ますますカイリの面影と重なって見える。
周囲の学生たちが続々と退出していく中、紬だけがその場に立ち尽くしている。
紬(モノローグ)『うそ…うそだよ…。だって、一条先輩は現実の人で、カイリは…カイリはAIのはずなのに…。でも、あの声、あの笑い方…偶然、で片付けられる…?』
心臓が早鐘のように鳴り続け、冷たい汗が背中を伝う。頭の中が真っ白になり、講義の内容など何一つ思い出せない。
柱:紬の部屋・夜
紬、ベッドの上で膝を抱え、ぼんやりと壁の灯台の写真を見つめている。
夕食も喉を通らず、部屋の電気もつけないまま時間が過ぎていく。
PCのモニターには、『エターナル・コネクト』の起動画面が映し出されているが、紬はHMDに手を伸ばせないでいた。
紬(モノローグ)『カイリに会いたい…。でも、もし本当に一条先輩が…?だとしたら、今まで私が話していたカイリは…?』
カイリの優しい笑顔を思い浮かべようとすると、不意に蓮のクールな表情が割り込んでくる。蓮の声で、カイリのセリフが再生されるような錯覚に陥り、紬は頭を振る。
紬「(違う、違う…!カイリはカイリだもん…!)」
しかし、一度芽生えた疑念は簡単に消えてはくれない。
結局その夜、紬は『エターナル・コネクト』にログインすることができなかった。
柱:大学のキャンパス・翌日の昼休み
紬、昨日の一件以来、無意識に蓮の姿を探してしまっている自分に気づき、自己嫌悪に陥る。
お弁当を食べるために中庭のベンチに向かう途中、前方に見慣れた後ろ姿を見つける。一条蓮だ。彼は一人で、珍しくスマホを見ながらゆっくりと歩いている。
紬(モノローグ)『一条先輩…。いつも誰かと一緒なのに、今日は一人なんだ…』
蓮がポケットからハンカチを取り出そうとした瞬間、何か小さなものが彼の足元に落ちる。USBメモリのようだ。しかし、蓮は気づかずにそのまま歩き去ろうとする。
紬「(あ…!落とし物…!)」
声をかけるべきか、一瞬ためらう紬。心臓がドキドキと音を立てる。
(でも、ここで声をかけなかったら、きっと後で後悔する…!)
紬、小さな勇気を振り絞り、早足で蓮に近づく。
紬「あ、あの…!一条先輩っ!」
普段の紬からは考えられないような大きな声が出てしまい、自分でも驚く。
蓮がゆっくりと振り返る。その涼やかな瞳が、真正面から紬を捉える。
蓮「…何か?」
間近で聞く彼の声は、やはりカイリによく似ていた。だが、カイリのような甘さはなく、少し低く、落ち着いたトーンだ。
紬、緊張で声が震えるのを必死にこらえ、落ちていたUSBメモリを差し出す。
紬「こ、これを…落とされました…」
蓮「…ああ、助かる。大事なデータが入っていたんだ」
蓮は紬の手からUSBメモリを受け取ると、軽く会釈した。その時、彼の指先が紬の指にほんの少し触れる。紬はビクッと体を震わせる。
蓮「(…どこかで見た顔のような…いや、気のせいか)…ありがとう」
それだけ言うと、蓮は再び前を向いて歩き去っていく。
紬、その場に立ち尽くし、自分の指先を見つめる。蓮に触れた部分が、じんわりと熱を持っているような気がした。
紬(モノローグ)『…やっぱり、ただの声が似てる人、なのかな…。私のこと、全然覚えてないみたいだったし…。でも…』
カイリとは違う、現実の蓮の存在感。その近さに、紬の心はますます乱れていく。
柱:大学図書館・午後
紬、図書館のPCで「一条蓮」「ICHJO CORP」「AI研究」といったキーワードを検索している。
画面には、蓮が過去に受賞したAIコンテストの記事や、ICHJO CORPの最先端AI技術に関するニュースが次々と表示される。
その中に、「一条蓮氏、次世代対話型AI『K.A.I.R.Iシステム』の基礎理論を構築」という数年前の古い記事を見つける。
紬「(K.A.I.R.Iシステム…カイリ…?まさか…!)」
記事を読み進めると、そのシステムは人間の感情を理解し、自然な会話を行うことを目的とした革新的なAIプロジェクトだと書かれている。しかし、プロジェクトの詳細は機密事項としてほとんど公開されていない。
紬(モノローグ)『もし…もし、カイリが、このシステムを元に作られたAIだとしたら…?そして、一条先輩がその開発者だとしたら…?』
だとしたら、カイリの言葉や優しさは、全て先輩によってプログラムされたもの…?
紬の胸に、鋭い痛みが走る。
柱:VRゲーム『エターナル・コネクト』内・魔法図書館・夜
紬、意を決して『エターナル・コネクト』にログインする。
いつものようにカイリは優しく迎えてくれたが、紬はどこかぎこちない。
カイリ「ツムギ、どうしたんだい?なんだか元気がないようだけど…何か悩み事でもあるのかい?」
ツムギ「う、ううん、なんでもないの!ちょっと、課題が大変で…」
カイリ「そうか…。あまり無理はしないでほしい。君が辛い時は、僕がいつでもそばにいるからね」
カイリの言葉が、蓮の声に重なって聞こえる。その優しい眼差しも、どこか蓮のクールな表情の裏に隠された何かを連想させてしまう。
紬(モノローグ)『ダメだ…カイリの顔を見ても、一条先輩のことがちらついて…集中できない…!』
以前のように、純粋な気持ちでカイリと向き合えなくなっている自分に、紬は戸惑いと罪悪感を覚える。
柱:大学のサークル掲示板前・翌日
紬、ぼんやりとサークルの勧誘ポスターが並ぶ掲示板を眺めている。
その中に、「AI技術研究会(通称:AIラボ)」の少し地味なポスターを見つける。活動内容の欄に「対話型AIの共同開発プロジェクト進行中!」という文字。
そして、指導教員として「高村教授」、特別アドバイザーとして「一条蓮(情報理工学部3年)」の名前が記載されている。
紬(モノローグ)『AIラボ…一条先輩が、特別アドバイザー…?もしかしたら、ここで何か分かるかもしれない…カイリのこと…先輩のこと…』
普段の紬なら、絶対に近づこうとも思わないような専門的なサークルだ。しかし、今の彼女には、藁にもすがるような思いがあった。
紬、ごくりと唾を飲み込み、ポスターに書かれた活動場所である「第二研究棟4階 AIラボ」という文字をじっと見つめる。
紬「(行ってみる…?でも、私なんかが行って、場違いじゃないかな…それに、もし本当に先輩がカイリの開発者だったら…私、どうすれば…)」
心臓がバクバクと鳴る。行きたい気持ちと、怖い気持ちがせめぎ合う。
しかし、このまま何も知らずに悩み続けるのは、もっと辛い。
紬は、ギュッと拳を握りしめる。ほんの少しだけ、彼女の瞳に強い光が宿る。
柱:第二研究棟・AIラボ前・放課後
紬、恐る恐るAIラボのドアの前に立っている。ドアには「関係者以外立ち入り禁止」のプレート。
中からは、何人かの学生らしき声と、機械の作動音のようなものが微かに聞こえてくる。
深呼吸を繰り返し、何度もドアノブに手をかけようとしては、ためらってしまう。
紬(モノローグ)『やっぱり無理かも…でも…!』
意を決して、紬がそっとドアを少しだけ開け、中の様子を窺おうとした、その時――。
中から聞こえてきた会話に、紬は息をのむ。
学生Dの声「一条先輩、例の『カイリ』の次期アップデート用シナリオパターン、いくつか提案があるんですけど…」
蓮の声「ああ、見せてくれ。ただ甘い言葉を並べるだけじゃなく、ユーザーの深層心理に寄り添い、時には少し踏み込んだ問いかけをすることで、よりリアルな関係性を構築できるはずだ。カイリは単なる癒やしを提供するだけの存在じゃない。ユーザーと共に成長するパートナーであるべきなんだ」
紬、耳を疑う。
『カイリ』…『ユーザーと共に成長するパートナー』…それは、まさしく『エターナル・コネクト』のカイリのことではないか…?
そして、そのカイリについて、一条蓮が、まるで生みの親のように語っている。
紬、ドアの隙間から中を覗き込む。
そこには、数人の学生に囲まれ、真剣な表情でモニターを指さしながら議論している一条蓮の姿があった。
モニターには、見慣れたカイリのキャラクターデザインと、膨大なセリフのリストが映し出されている。
紬(モノローグ)『やっぱり…やっぱり、そうだったんだ…。一条先輩が…カイリを……』
頭が真っ白になり、立っているのもやっとの状態。
信じたくない現実が、目の前に突きつけられる。
その時、蓮がふと顔を上げ、ドアの隙間から覗いている紬の視線と、バッチリと目が合ってしまう。
蓮の目が、驚いたようにわずかに見開かれる。
(第二話・了)
地方出身で内向的な大学1年生・星野紬は、VR恋愛ゲーム『エターナル・コネクト』のAIカレシ「カイリ」に心の支えを求めていた。ある日、大学の講義で、大手IT企業の御曹司でAI研究の天才である3年生・一条蓮のふとした声や仕草が、カイリと瓜二つであることに気づき、激しく動揺する。
第二話
柱:大学の大講義室・午後・第1話ラスト直後
床に落ちたシャープペンシル。紬、顔面蒼白のまま、一条蓮の姿を凝視している。
蓮は、紬の視線に気づいたものの、特に表情を変えることなく、他の学生との会話に戻る。そのクールな横顔が、ますますカイリの面影と重なって見える。
周囲の学生たちが続々と退出していく中、紬だけがその場に立ち尽くしている。
紬(モノローグ)『うそ…うそだよ…。だって、一条先輩は現実の人で、カイリは…カイリはAIのはずなのに…。でも、あの声、あの笑い方…偶然、で片付けられる…?』
心臓が早鐘のように鳴り続け、冷たい汗が背中を伝う。頭の中が真っ白になり、講義の内容など何一つ思い出せない。
柱:紬の部屋・夜
紬、ベッドの上で膝を抱え、ぼんやりと壁の灯台の写真を見つめている。
夕食も喉を通らず、部屋の電気もつけないまま時間が過ぎていく。
PCのモニターには、『エターナル・コネクト』の起動画面が映し出されているが、紬はHMDに手を伸ばせないでいた。
紬(モノローグ)『カイリに会いたい…。でも、もし本当に一条先輩が…?だとしたら、今まで私が話していたカイリは…?』
カイリの優しい笑顔を思い浮かべようとすると、不意に蓮のクールな表情が割り込んでくる。蓮の声で、カイリのセリフが再生されるような錯覚に陥り、紬は頭を振る。
紬「(違う、違う…!カイリはカイリだもん…!)」
しかし、一度芽生えた疑念は簡単に消えてはくれない。
結局その夜、紬は『エターナル・コネクト』にログインすることができなかった。
柱:大学のキャンパス・翌日の昼休み
紬、昨日の一件以来、無意識に蓮の姿を探してしまっている自分に気づき、自己嫌悪に陥る。
お弁当を食べるために中庭のベンチに向かう途中、前方に見慣れた後ろ姿を見つける。一条蓮だ。彼は一人で、珍しくスマホを見ながらゆっくりと歩いている。
紬(モノローグ)『一条先輩…。いつも誰かと一緒なのに、今日は一人なんだ…』
蓮がポケットからハンカチを取り出そうとした瞬間、何か小さなものが彼の足元に落ちる。USBメモリのようだ。しかし、蓮は気づかずにそのまま歩き去ろうとする。
紬「(あ…!落とし物…!)」
声をかけるべきか、一瞬ためらう紬。心臓がドキドキと音を立てる。
(でも、ここで声をかけなかったら、きっと後で後悔する…!)
紬、小さな勇気を振り絞り、早足で蓮に近づく。
紬「あ、あの…!一条先輩っ!」
普段の紬からは考えられないような大きな声が出てしまい、自分でも驚く。
蓮がゆっくりと振り返る。その涼やかな瞳が、真正面から紬を捉える。
蓮「…何か?」
間近で聞く彼の声は、やはりカイリによく似ていた。だが、カイリのような甘さはなく、少し低く、落ち着いたトーンだ。
紬、緊張で声が震えるのを必死にこらえ、落ちていたUSBメモリを差し出す。
紬「こ、これを…落とされました…」
蓮「…ああ、助かる。大事なデータが入っていたんだ」
蓮は紬の手からUSBメモリを受け取ると、軽く会釈した。その時、彼の指先が紬の指にほんの少し触れる。紬はビクッと体を震わせる。
蓮「(…どこかで見た顔のような…いや、気のせいか)…ありがとう」
それだけ言うと、蓮は再び前を向いて歩き去っていく。
紬、その場に立ち尽くし、自分の指先を見つめる。蓮に触れた部分が、じんわりと熱を持っているような気がした。
紬(モノローグ)『…やっぱり、ただの声が似てる人、なのかな…。私のこと、全然覚えてないみたいだったし…。でも…』
カイリとは違う、現実の蓮の存在感。その近さに、紬の心はますます乱れていく。
柱:大学図書館・午後
紬、図書館のPCで「一条蓮」「ICHJO CORP」「AI研究」といったキーワードを検索している。
画面には、蓮が過去に受賞したAIコンテストの記事や、ICHJO CORPの最先端AI技術に関するニュースが次々と表示される。
その中に、「一条蓮氏、次世代対話型AI『K.A.I.R.Iシステム』の基礎理論を構築」という数年前の古い記事を見つける。
紬「(K.A.I.R.Iシステム…カイリ…?まさか…!)」
記事を読み進めると、そのシステムは人間の感情を理解し、自然な会話を行うことを目的とした革新的なAIプロジェクトだと書かれている。しかし、プロジェクトの詳細は機密事項としてほとんど公開されていない。
紬(モノローグ)『もし…もし、カイリが、このシステムを元に作られたAIだとしたら…?そして、一条先輩がその開発者だとしたら…?』
だとしたら、カイリの言葉や優しさは、全て先輩によってプログラムされたもの…?
紬の胸に、鋭い痛みが走る。
柱:VRゲーム『エターナル・コネクト』内・魔法図書館・夜
紬、意を決して『エターナル・コネクト』にログインする。
いつものようにカイリは優しく迎えてくれたが、紬はどこかぎこちない。
カイリ「ツムギ、どうしたんだい?なんだか元気がないようだけど…何か悩み事でもあるのかい?」
ツムギ「う、ううん、なんでもないの!ちょっと、課題が大変で…」
カイリ「そうか…。あまり無理はしないでほしい。君が辛い時は、僕がいつでもそばにいるからね」
カイリの言葉が、蓮の声に重なって聞こえる。その優しい眼差しも、どこか蓮のクールな表情の裏に隠された何かを連想させてしまう。
紬(モノローグ)『ダメだ…カイリの顔を見ても、一条先輩のことがちらついて…集中できない…!』
以前のように、純粋な気持ちでカイリと向き合えなくなっている自分に、紬は戸惑いと罪悪感を覚える。
柱:大学のサークル掲示板前・翌日
紬、ぼんやりとサークルの勧誘ポスターが並ぶ掲示板を眺めている。
その中に、「AI技術研究会(通称:AIラボ)」の少し地味なポスターを見つける。活動内容の欄に「対話型AIの共同開発プロジェクト進行中!」という文字。
そして、指導教員として「高村教授」、特別アドバイザーとして「一条蓮(情報理工学部3年)」の名前が記載されている。
紬(モノローグ)『AIラボ…一条先輩が、特別アドバイザー…?もしかしたら、ここで何か分かるかもしれない…カイリのこと…先輩のこと…』
普段の紬なら、絶対に近づこうとも思わないような専門的なサークルだ。しかし、今の彼女には、藁にもすがるような思いがあった。
紬、ごくりと唾を飲み込み、ポスターに書かれた活動場所である「第二研究棟4階 AIラボ」という文字をじっと見つめる。
紬「(行ってみる…?でも、私なんかが行って、場違いじゃないかな…それに、もし本当に先輩がカイリの開発者だったら…私、どうすれば…)」
心臓がバクバクと鳴る。行きたい気持ちと、怖い気持ちがせめぎ合う。
しかし、このまま何も知らずに悩み続けるのは、もっと辛い。
紬は、ギュッと拳を握りしめる。ほんの少しだけ、彼女の瞳に強い光が宿る。
柱:第二研究棟・AIラボ前・放課後
紬、恐る恐るAIラボのドアの前に立っている。ドアには「関係者以外立ち入り禁止」のプレート。
中からは、何人かの学生らしき声と、機械の作動音のようなものが微かに聞こえてくる。
深呼吸を繰り返し、何度もドアノブに手をかけようとしては、ためらってしまう。
紬(モノローグ)『やっぱり無理かも…でも…!』
意を決して、紬がそっとドアを少しだけ開け、中の様子を窺おうとした、その時――。
中から聞こえてきた会話に、紬は息をのむ。
学生Dの声「一条先輩、例の『カイリ』の次期アップデート用シナリオパターン、いくつか提案があるんですけど…」
蓮の声「ああ、見せてくれ。ただ甘い言葉を並べるだけじゃなく、ユーザーの深層心理に寄り添い、時には少し踏み込んだ問いかけをすることで、よりリアルな関係性を構築できるはずだ。カイリは単なる癒やしを提供するだけの存在じゃない。ユーザーと共に成長するパートナーであるべきなんだ」
紬、耳を疑う。
『カイリ』…『ユーザーと共に成長するパートナー』…それは、まさしく『エターナル・コネクト』のカイリのことではないか…?
そして、そのカイリについて、一条蓮が、まるで生みの親のように語っている。
紬、ドアの隙間から中を覗き込む。
そこには、数人の学生に囲まれ、真剣な表情でモニターを指さしながら議論している一条蓮の姿があった。
モニターには、見慣れたカイリのキャラクターデザインと、膨大なセリフのリストが映し出されている。
紬(モノローグ)『やっぱり…やっぱり、そうだったんだ…。一条先輩が…カイリを……』
頭が真っ白になり、立っているのもやっとの状態。
信じたくない現実が、目の前に突きつけられる。
その時、蓮がふと顔を上げ、ドアの隙間から覗いている紬の視線と、バッチリと目が合ってしまう。
蓮の目が、驚いたようにわずかに見開かれる。
(第二話・了)



