「先輩が好きなのは、桜の木ですか?」

風が強く吹いて、髪の毛が視界を隠す。

涙が、横に流れた。

「山野さくらさん……ですか?」

先輩が目を見開くのは、私が泣いているからなのか。
私の口から、彼女の名前が出たからなのか。
私には、分からない。

先輩は困ったように目を細め、さみしそうに笑った。

「……内緒な?」

パラパラと、ノートがめくれる。

白紙のページが続き、最後のページが現れた。

表紙の字とは違う。控えめな、小さな丸い文字で(つづ)られた想い。

『優が好きだよ』


END