「せんぱーいっ。山崎先輩!」

「……よう」

あの恥ずかしい出会いをきっかけに、私と山崎優(やまざきゆう)先輩は、学校内で会えば話をするようになった。

先輩は、ひとつ上の2年生。

主に、私が2年の階に行っては、一方的に話かけているような状態で。

だけど先輩は、嫌そうな表情は少しも見せない。

私が、先輩に恋をするのに、時間はかからなかった。

少しは、仲良くなってるかなって……勘違いじゃないといいな。

先輩はよく廊下の窓際にいて、見つけやすいし、声もかけやすい。

そしてたまに、窓の外を見つめては、切なそうに目を細めている。

入学式の時に満開だった桜の花びらは、今はほとんど散っていた。

この目をする時、先輩は私がそばにいることなんてきっと忘れているから、寂しくなる。

出会った日も桜の木の下にいたし、きっと桜がすごく好きなんだ。

私が、嫉妬を覚えてしまうほどに。