「ま、迷った……」

高校の入学式、当日。

ひとつの汚れもない、ピカピカの制服に身を包み、校舎の外で私は早くも迷子になっていた。

「え、うそうそ、ほんと? 待って、ここどこ」

誰にも聞こえない問いかけを口に出しながら、周りをキョロキョロ。

入学出来ることにテンションが上がりすぎて、調子乗った。

その結果が、これ。

ちょっとその辺探索しようと思っただけなんだけどなぁ……。

左胸に付いているピンクの造花を触る。

入学式から遅刻とか……考えただけで、泣きそうになる。
自分のせいなんだけど。

顔を上げれば、満開の桜が目の前に広がっていて、その綺麗な光景に少しだけ心が救われる。

――そこに、彼はいた。