「すみません、見覚えがあったので」

「え?どこかで会ったことある?」

「あ、大学が同じで…玲奈ちゃんの友達です」

「あー、玲奈の。そっか!名前は?」


すごく優しい声。

怖そうなイメージを勝手に持ってたけど、話すとなぜだか落ち着く。


「あ、安達雪です」

「雪ね。俺、志波 樹(しばいつき)」


樹先輩かぁ!


「雪、アナウンス聞こえた?」

「え?あ…聞こえませんでした」


そういや、さっきなんか流れてたけど聴き逃してしまった。

多分、急ブレーキのことだと思うんだけど…


「俺も。これ、学校遅刻だなー」

「そうですね…あ…」


急に後ろから誰かに押された。

満員だし、誰かが少し動いたときにぶつかっただけだろうけど。


「おっと。雪、大丈夫か?」

「はい。またぶつかってしまってすみません」

「大丈夫。雪、こっち来て」


と言って、さりげなく私をドア側にしてくれた。