初恋の人は人気者

しばらくして、私たちは帰ることにした。

私の門限時間が近づいてきたから。


大学生なのに門限ってどうなの?

って、いつも不満に思う。


「玲奈ちゃん、雪ちゃんまた来てね」

「はい!今日はありがとうございました」


冬弥さんにお礼を言って、私たちはお店の前で解散した。

玲奈ちゃん、今日は友達の家に泊まるらしい。


少し歩くと、「雪!」って誰かに呼ばれた気がした。

ゆっくり振り向くと…


「先輩…?」

仕事してるはずの先輩がいた。


「送ってく」

「え?だって、まだ仕事が…」

「今日はもう終わり」

「あ、そうなんですか。お疲れ様です」

「ん」


先輩はさりげなく車道側に来てくれて、家どこ?と聞いてくる。

優しいよね…?


冬弥さんや玲奈ちゃんは、すごく驚いてたけど。

普通に優しい。


「先輩は、どうしてそんなに優しくしてくれるんですか?」

「は?なに、急に」

「あ、すみません…」

「別に謝ることじゃねぇだろ」


と言いながら、頭を撫でてくる先輩。

朝からほんとにスキンシップが多い。


「雪に興味があるから」

「え?」


私に…?


「俺を見ても騒がない」

「えっと…」

「俺、大学行くと必ずキャーキャー騒がれて鬱陶しいんだよ」


あー…確かに、先輩は人気者だもんね。

玲奈からも聞いたことがあった。

ファンクラブまであるとかないとか…


「でも、雪は違った。見たことあるなって言った。こいつ、俺とこと見ても騒がないなんて珍しいって」


あ、そういうこと。


「それに、雪は気づいてるかわからないけど…あのとき、すごい不安そうだった」

「え?」


不安そう…?