琴葉は孤立していた私に声を掛けてくれた。持ち前の明るさで、私にいつも笑顔を向けてくれた。そんな子に恋をしないわけがない。自分が同性しか愛せないと気付いた時から、私は人を自分に近づかせないようにしていた。一人で生きていく覚悟を決めていた。そんな私の前に突然現れて、私の手を引いて進む琴葉がまぶしかった。この子のそばにいたい。この子を見守れるならそれでいい。初めはそう思っていた。それなのに欲が出た。自分が幸せにしてやりたいと、そう思うようになってしまった。
そんな日が永遠に来ることは無いのに……。
分かっていた。
分かっていたことなのに。
バカな自分に腹が立つ。
こんな思いをするなら、初めから友達になんかならず、距離をとればよかった。ほかの人たちと同じように、自分に近づかせなければ良かったのだ。
「仲良くならなければ良かった……」
ぽつりとそう言うと、杏さんが私の背に手を置いて、ゆっくりと撫でてくれた。
「それは嘘ね。どんなに拒絶したとしても、距離をとったとしても、香奈ちゃんは琴葉さんと友達になっていたわよ」
杏さんに撫でられながら、私はお酒をあおった。飲まずに話せる内容ではなかったからだ。だから私は強めのカクテルをマスターにお願いして、それを飲みながら自分の想いをすべて杏さんに吐露した。杏さんは呆れることもなく、私の話を聞きそれに答えてくれた。年上で聞き上手な杏さんには何でも話してしまう。そう思いながら私は自分の中にある恋心を胸の奥にしまい込んだ。


