「それで、香奈ちゃんはどうしたいの?」
「私は……琴葉に幸せになってもらいたい。木下次長と幸せになってもらいたい」
「そんなことをしたら、あなたは幸せになれないじゃない。辛い思いをするのよ」
「いいんです。今の琴葉は見ていられない。私がどんなにそばにいても……私は琴葉を幸せにはしてあげられない」
私はぐっと唇を引き結んだ。
感情的に言葉を吐き出さないよう気を付けながら、ゆっくりと自分の想いを杏さんに聞いてもらった。それを聞いていた杏さんは、大きく息を吐き出した。
「香奈ちゃんは本当に不器用ね。昔の自分を見ているようで嫌になるわ」
「すみません」
しゅんとしながら肩を落とすと、杏さんが私の顎に手を添え、次の瞬間には顔を上げさせられた。
顎クイ。
こんなにスマートにこんな仕草を出来る人って、そういないと思う。アニメや漫画の世界の住人にしかできないと思っていたシチュエーションに胸がどきどきと高鳴ってしまう。
「ふふっ、ドキドキした?」
そう言って不敵に笑う杏さんを見て、からかわれたと思った私は思わずプイっと顔をそむけた。子供っぽい行動をとってしまったことに少し驚きながら、横目で杏さんを見ると、声を出して杏さんが笑っていた。
「香奈ちゃんは可愛いわね」
「私……あまり可愛いとか言われたことないです」
「あら、そうなの?」
「はい。クールとか冷たいとか。美人だけど近寄りがたいとかよく言われて。こんな私の友達になってくれたのは琴葉だけだったんです」


