自分が木下次長に抱きしめられていることに気付き、心臓がバクバクと動き出す。
なんでどうして……。
意味が分からず、固まっていると、木下次長の腕に力が入るのを感じた。
「皆川……すまない。俺は自分勝手な男だ。君の気持ちを知りながら一週間とはいえ付き合うことを了承し、気持ちを受け止められないと振った。それなのに、こんなことをして……」
私は黙ったまま木下次長が話しを聞いていた。
「俺の心の中にはいつも……いつだって美紀子だけがいた。そんな俺の心の中に皆川……君が入ってきた。今、俺の心の中は君でいっぱいなんだ。俺を拒絶しないでほしい。もう一度俺を見てほしい」
それって……それって、うぬぼれてもいいのだろうか?
「木下次長……それって……」
木下次長がフッと口角を上げた。
「もう颯斗とは呼んでくれないのか?」
その言葉に、ぶわっと熱いものが溢れ出す。それと同時に、瞳に涙が集まり決壊したダムの様に涙がこぼれ落ちた。
「……っ……良いんですか?私がまたそう呼んでも……」
「ああ、呼んでくれ。俺も琴葉と呼んでもいいか?」
その言葉に私は嗚咽を漏らしながら答えた。
「ふぇっ……うれじいでずー」
格好悪いが、私は鼻をすすりながらそう答えた。
そんな私をぎゅっと抱きしめながら、木下次長が嬉しそうに笑った。


