それが皆川をさす言葉だと分かっていたが、俺はそれを無視した。
それを見ていた杏があきれたように溜息をついた。
「あんた本当にバカね。そんな顔をして、まだ自分の気持ちに噓をつくつもり?それとも気付いているのにごまかそうとしているの?」
図星をつかれて俺は何も言えなかった。
「もしかして美紀子に悪いとか未だに思っているの?」
「なっ……そう思って何が悪い。美紀子は……」
俺がグダグダと言葉を続けようとしているのを杏が断ち切った。
「ほんとバカたわ。それこそ美紀子に悪いんじゃないの?あんたはあんたの時間を生きなさいよ。もういない人間にすがろうとするな。それはもう甘えでしょう。逃げようとしているだけよ。いい加減に前を向いて進みなさい。美紀子だって成仏できないわよ」
「すがってなんか……」
そこまで言って、俺は言葉を飲み込んだ。
確かに俺は美紀子にすがっている。
美紀子との思い出に俺はすがって、すべてを拒絶し続けた。
美紀子との思い出があればそれでよかった。
一生独りでもよかった。
そんな俺の心に入り込んできたのは皆川だった。真っすぐな想いを隠すことなく伝えてくる。それが物凄く嬉しかった。


