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それからは皆川と視線が合うと、あの嫌そうな顔を向けてくる。そすがにそんな顔をされると気持ちがへこむ。せめて普通に接してほしいと思うが、皆川の気持ちを考えれば何も言うことは出来なかった。
「一体どうしたらいいんだ……」
思わず声に出すと、近くに立っていた皆川と目が合った。しかしすぐに目をそらされてしまった。ため息が出そうになるのをぐっとこらえながら、俺は仕事に集中した。
夜になり杏に呼び出された。仕事の話だと言われ、仕方なく指定された場所にやってくると、杏はカウンターで一人グラスを傾けていた。
「遅いじゃない。先に始めていたわよ」
そう言いながら酒の入ったグラスを傾けるのをやめようとはしない。気心の知れた関係だから、そこはスルーして隣の席に腰を下ろす。
「それで?仕事の話ってなんだ?」
「ああ、それ嘘よ。仕事の話なんてないの。久しぶりに颯斗と飲みたかっただけ」
「はあ?まあいいが、それなら普通に呼び出してくれ」
俺は注文したビールに口づけながら、溜め息をついた。
「颯斗あんた、疲れた顔してるわね?」
「ん?ああ、最近仕事が忙しくてな」
「……嘘ね。あの子のことでしょう。違う?」
あの子。


