『クライス』本社前にたどり着くと、面接時間よりも40分早かった。
早く着きすぎてしまった。
しかしそれは想定内だった。
早く着いたら向かいのカフェでコーヒーを飲んで、落ち着いてから面接に向かおうと昨日から考えていた。私はカフェでホットカフェラテを注文して、『クライス』本社の入り口の見える場所に座った。
この面接に合格出来たら私もこの会社に……。あの自動ドアを毎日潜り抜けて、バリバリ仕事をするんだ。
面接の20分前になり、私は『クライス』へと向かった。対面面接は5から8分前に受付を済ませるのが目安。しかし受付から面接場所を考慮して15分前に受付をする。私は時計の時間を確認しながら受付を済ませ、面接会場へと案内されていると低くよく通る声が聞こえてきた。
えっ、あの人は……。
私の視線先には、先ほど痴漢から助けてくれた男性がいた。
あの人、ここの社員さんだったんだ。
ドキドキと胸が高鳴るのを感じながら、案内してくれている女性の後を追った。そして面接会場の前に並んだ椅子に座って待つように言われ、私はゆっくりと腰を下ろした。
まだ胸が高鳴っている。
こんなの運命じゃん!
大きな声で叫び出したいのを我慢する。
ここで失態を起こせば、今までの苦労も水の泡だ。
あの人と働くことも出来なくなってしまう。
そんなの絶対にダメ。
私は一呼吸すると、気持ちを落ち着かせながら前を見た。
絶対にこの面接に受かってみせる!


